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【連載】「US-2」ができるまで(14)

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可動部分が正しく作動するかチェックします。


機体内外の艤装(ぎそう)を終え、「US-2」は見た目にもほぼ完成を迎えました。次は、取り付けた動翼やギアが正しく作動するかのチェックを行います。

「US-2」は、前任機「US-1A」の設計をベースとし、開発当時の最新の理論とテクノロジーを取り入れて改修した機体です。たとえば操縦システムは、前任機では操縦装置とエルロン、ラダー、エレベーターといった各舵面が油圧パイプなどで直接つながっていましたが、「US-2」ではパイロットが操縦装置に加えた動きをいったん電気信号に変換し、電線を通して各舵面を動かすアクチュエーターに送って制御する方式になっています。これをフライ・バイ・ワイヤ(Fly by Wire)といいます。また、エンジン制御も同様で、現代の旅客機と同様のファデック(FADEC=Full Authority Digital Engine Control)を搭載し、「US-1A」までの飛行艇と比べてパイロットのワークロードを大きく低減させました。

艤装が完了した「US-2」は、飛行試験を行う前に工場内でこれらが正常に動くかのチェックを行います。工場内ではエンジンはかけられませんので、電源や油圧を供給する装置を機体につないで実際に舵面やギア(降着装置)を動かします。 わずかな違和感も見逃さないよう、舵やギアの動きを見つめるその姿はとても真剣です。

なお、エンジンのチェックはロールアウト(機体が完成し、工場の建物から外に出されること)後に防音壁のある専用の場所で行います。

※艤装(ぎそう)・・・エンジンや機体内外の装備品を取り付ける工程のこと、または取り付ける装備品そのもの。

「US-2」の主翼。動翼は面積が広く、作動角も一般的な航空機よりはるかに大きくなっています。向かって左から、エルロン、外舷(がいげん)フラップ、内舷フラップです(1)「US-2」の主翼。動翼は面積が広く、作動角も一般的な航空機よりはるかに大きくなっています。向かって左から、エルロン、外舷(がいげん)フラップ、内舷フラップです
舵面の一つ、ラダーです。チェックの前に、作動角を確認・調整するための目盛りが取り付けられています(2)舵面の一つ、ラダーです。チェックの前に、作動角を確認・調整するための目盛りが取り付けられています
低速で揚力を増すための主翼前縁のスラットです。「US-2」の主翼上面にはスポイラー(空気抵抗により揚力を制御する装置)もあります(3)低速で揚力を増すための主翼前縁のスラットです。「US-2」の主翼上面にはスポイラー(空気抵抗により揚力を制御する装置)もあります
降着装置の作動チェック前に、油圧ジャッキで機体を持ち上げます(4)降着装置の作動チェック前に、油圧ジャッキで機体を持ち上げます。
手前にあるのは、エンジンを使用しなくても、機内に油圧を供給できる装置です(5)手前にあるのは、エンジンを使用しなくても、機内に油圧を供給できる装置です
ノーズ・ギアとギアカバーのチェックです(6)ノーズ・ギアとギアカバーのチェックで
メインギアのチェックです。(7)メインギアのチェックです。


ライター 板倉秀典

 

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