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【連載】「US-2」ができるまで(13)

-プロのライターが密着取材!

機内の艤装(ぎそう)です。電子機器や座席などを取り付けます。


前回は機体外部の艤装の様子をお伝えしました。今回は、機内の艤装の様子をご紹介します。建物でいう内装工事です。

「US-2」の機内には、飛行に必要な操縦システムや航法システム、救難任務に必要なミッションコンピューターといった電子機器をはじめ、搭乗員用の座席や救助された人を寝かせる担架、長時間のミッションに備えてのトイレ、冷たい海で体が冷えた救助者に温かい飲み物を提供できる簡易ギャレーなどが搭載されています。また、機上救難員が使用するゴムボートや潜水具といった救難装備を収納する専用スペースやラックなどもあります。機内の艤装とは、こうした設備を設置して正常に作動するように配線や配管をつないでいく作業のことをいいます。

機内ではまずフレームやストリンガーといった構造材(第5回で紹介 )に沿って配線や配管が通されます。次に電子機器が搭載され、コクピットには操縦装置やモニターなどが取り付けられます。輸送機などの通常の自衛隊機では、わずかでも軽くするために機内は構造材や配線、配管などがむき出しになっている機種も多いですが、「US-2」では機内全体がカバーで覆われていて、まるで旅客機のようなしっかりとした内装になっています。これは、海水でずぶ濡れになった救難員や要救助者(救助された人)から飛んだ飛沫(しぶき)が機器類にかからないようにするためです。

★ 第5回へのリンクはこちら
建造開始!いよいよ機体の組立がはじまります

また、風が強かったり波が高かったりする場合には救難扉から機内に海水が流れ込むこともありますが、その海水が前部の乗員区画に流れないように大きめの段差と扉が設けられ、また床下から機外に排水できる構造になっています。一見無意味に思えるような部分にも、救難任務に特化したこだわりが詰まっているわけですね。

ついに機体内外の艤装が完了し、見た目は完成した状態になりました。次回は、完成した「US-2」が正しく機能するかどうかのチェックの模様をお伝えします。

※艤装(ぎそう)・・・エンジンや機体内外の装備品を取り付ける工程のこと、または取り付ける装備品そのもの。

内装のカバーの一部です。型紙はありますが、縫製によって大きさが微妙に変わるため、何度も作業場と機体を行き来してピッタリに仕上げるそうです。(1)内装のカバーの一部です。型紙はありますが、縫製によって大きさが微妙に変わるため、何度も作業場と機体を行き来してピッタリに仕上げるそうです
軽量化と耐衝撃性を両立させるためビニールレザーのカバーには低反発のスポンジが入っています(2)軽量化と耐衝撃性を両立させるためビニールレザーのカバーには低反発のスポンジが入っています
救難用具を機内に固定するための部品だそうです。このように養生し「US-2」に積んで納入します(3)救難用具を機内に固定するための部品だそうです。このように養生し「US-2」に積んで納入します
内装ですっぽりカバーされた乗員区画。向かって奥が機体後方です(4)内装ですっぽりカバーされた乗員区画。向かって奥が機体後方です。
「US-1A」まではコクピット下にあったトイレ。「US-2」では与圧された乗員区画内に移され、使いやすくなりました(5)「US-1A」まではコクピット下にあったトイレ。「US-2」では与圧された乗員区画内に移され、使いやすくなりました
搭載前の座席です。向かって左端がコクピットクルー用のもので、座面の高さが調整できます(6)搭載前の座席です。向かって左端がコクピットクルー用のもので、座面の高さが調整できます
荒れた海での離着水は激しい振動があるため、全席が4点式のシートベルトで体を固定するようになっています(7)荒れた海での離着水は激しい振動があるため、全席が4点式のシートベルトで体を固定するようになっています。


ライター 板倉秀典

 

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