TCFD提言への賛同と情報開示

新明和工業は、気候変動に関する財務情報開示を積極的に進めていくというTCFD提言の趣旨に2023年1月に賛同し、TCFD提言に基づく情報を開示いたしました。
今後もTCFD提言のフレームワークを活用して、継続的に情報開示の質と量を充実させるとともに、気候変動への取り組みを一層推進し、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。


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1. ガバナンス

代表取締役・取締役社長を議長とする取締役会は、気候関連リスク・機会を企業経営に関する重要な課題・テーマとして捉え、監督・審議する責務を担っています。当社の取締役会は原則として毎月1回開催され、中期経営計画に基づき気候変動を含む重要な経営課題について議論、検討するなど、取締役および執行役員の業務執行について監督を行っています。

当社は、長期的な視点に立った経営を志向し、企業経営におけるESG(Environment,Social,Governance)に関する諸課題に対応するため、「サステナビリティ会議」を設置しています。取締役副社長執行役員(サステナビリティ担当)を議長とする同会議は、重要課題(マテリアリティ)の特定およびKPIの設定、ESGの各要素に関する分科会(環境分科会、社会分科会、統治分科会)における検討等の進捗状況のフォローおよび統括、KPIの達成状況の確認および計画の見直し並びにそれらの状況の取締役会への報告(原則として年2回)を行うこととしています。

気候関連リスク・機会も重要課題のひとつとしてこの枠組みの中で取り扱われ、同会議で、これらの動向のモニタリングも行います。

2. 戦略

気候変動が当社事業にもたらす潜在的な影響の大きさと長期的な不確実性に鑑み、当社事業に関わる気候関連リスク・機会を特定・評価するプロセスとして、シナリオ分析を行っています。
5つある事業部のうち、特装車事業および流体事業の2事業については2022年度にシナリオ分析を実施、残りの3事業であるパーキングシステム事業、産機・環境システム事業、航空機事業については2023年度にシナリオ分析を実施しました。

1.5℃/2.0℃シナリオ(世界全体で2050年のネットゼロが実現するシナリオ)と、4.0℃シナリオ(経済活動を優先した結果、気候変動が進行し、異常気象や災害の激甚化などが起こるシナリオ)の2つのシナリオによる世界観を想定し、気候関連リスク・機会を特定しました。

具体的なシナリオ分析のプロセスとシナリオ分析結果は以下の通りです。

また、これらの気候関連のシナリオ分析結果は、2024年度からスタートした中期経営計画[SG-2026]に反映され、各事業部門における事業戦略に展開されています。

<シナリオ分析のプロセス>
<シナリオ分析結果>
シナリオ 外部環境の変化 シナリオ分析結果 顕在化時期
1.5℃/2.0℃
シナリオ
GHG排出に対する規制強化

・低炭素化技術への移行

・市場構造の変化

リスク

共通

  • 炭素税等による生産・調達コストの増加
  • 再生可能エネルギー購入による経費増加

中〜長期

特装車

  • EV車両・代替燃料車(燃料電池、水素など)への仕様変更に伴い、顧客要望対応や技術的対応が適時に行えない場合の売上機会の逸失
  • 低炭素化・脱炭素化に向けた新たな生産技術や生産性向上のための研究開発によるコスト増加

中〜長期

パーキング
システム

  • EV充電設備等、モビリティーの変化に対応するための技術開発に伴うコストの増加​

中〜長期

  • ZEB化や再エネ・EV優遇政策等や得意先デベロッパーによるZEB化の要請に貢献することができない等、環境要件に適合できないことで市場での競争力が減少し、受注機会を失うリスク​

中期

産機・環境
システム

メカトロ
ニクス

  • ​EV/自動運転車用などに採用される特殊電線の多様化や需要増加の中で、新規参入企業との競争激化やシェア低下のリスク

中期

  • 循環型社会への対応遅れにより、他社と比較して製品使用時の環境負荷が高いことによる製品の評価が低下するリスク

中〜長期

環境

  • 中継施設/リサイクルセンターにおける低炭素技術開発コストの増加、導入遅れによる競争力低下

中〜長期

  • ​廃棄物処理全体の需要縮小による新規設備売上減少および需要縮小に対応した多様なプラント提案等の対応遅れによる販売機会の逸失リスク

長期

流体

  • 既存製品の低炭素化(高効率化・長寿命化)に対応できない場合の売上機会の逸失
  • 製造工程全体(サプライチェーン含む)に係る低炭素化・サーキュラーエコノミー対応の遅れによる製品の売上減少

中〜長期

航空機

  • ​航空機リサイクルに対する要請が増すことにより、製造工程で排出される廃材/使用済み機体の再資源化等のコスト増加
  • 電動/水素航空機の実用化に関する各種研究開発コストの増加(追加的な製品安全基準等の要請に対応するための研究、熱可塑性材料等の研究等)

中〜長期

機会

特装車

  • 技術面の高付加価値化や顧客要望への早期対応による売上機会の増加
  • CO2削減意識の高まりから、信頼性の高い長寿命製品が選ばれ、メンテナンスの重要性が増加することにより、競争力が向上し、売上機会が増加

中〜長期

パーキング
システム

  • 顧客からのZEB化要請への的確な技術対応により、高付加価値製品としての販売機会の増加

中期

  • EV充電設備等、モビリティーの変化に対応した機械式駐車設備への更新需要の増加

中〜長期

産機・環境
システム

メカトロ
ニクス

  • EV/水素車両/自動運転などの多様な特殊電線(素材/構造)、高効率化等の顧客の要請に対応した機器の提供による市場シェア拡大や新たな収益源を獲得できる機会​
  • 低炭素化による市場構造の変化に応じ、新たな設備需要が生じることによる電線の多用途化への対応による売上増加

中〜長期

環境

  • ​設備の長寿命化/メンテナンスによる延命化によるライフサイクル排出量が少ない設備の開発設計による製品ラインアップの充実
  • 低炭素経済への変化に応じ、既存設備に低炭素技術(省エネ運転等)の導入や、潜在的ニーズ把握による脱炭素製品の具現化(焼却/埋め立て処理から3Rへの転換に伴う中継設備の役割変化やリサイクルセンターのサービス強化等への対応)による売上増加の機会

中〜長期

流体

  • 製品の高効率化と省エネ・省人化に対応した工事や保守・点検サービスによる売上機会の増加
  • 浸水時の機能維持、老朽化対策など国策に沿った既存設備の更新による機器・工事・サービスの売上機会の増加

中〜長期

航空機

  • ​低炭素・環境配慮型の次世代エアモビリティーを求める顧客ニーズへの対応(軽量化や省エネ化)を進めることで、製品の競争力を高め、市場シェアの増加や新たな収益源を獲得できる機会

中〜長期

  • ​低炭素要求にマッチしたリサイクルCFRP材の活用や新加工技術の開発による低炭素複合材部品の引き合い機会増加

短〜長期

4.0℃
シナリオ

・豪雨、洪水、台風等の気象災害の激甚化

・長期的な年平均気温の上昇や降雨量の変化

リスク

共通 ()

  • 高潮/豪雨/洪水等の気象災害による工事の停止やサプライチェーンの寸断による部品欠品、調達先変更等による調達コストの増加、収益性の低下
  • 平均気温上昇による労働環境の悪化、生産性低下、空調コスト上昇

長期

機会

特装車

  • 国土強靭化基本計画に向けたインフラ整備に必要な特装車の販売強化による売上機会の増加

短〜長期

パーキング
システム

  • 異常気象に伴う台風・豪雨・水害等の増加による、故障した機械式駐車設備のメンテナンス需要の増加、飛来物や環境変化から車両を守るため、冠水対策製品等の災害に強い設備需要の増加

中〜長期

産機・環境
システム

メカトロ
ニクス

  • 遠隔監視システム搭載の製品および故障予防診断やサービスの実施

中〜長期

環境

  • 災害廃棄物の受入提案に自治体等との協働により取り組むことによる売上増加、地域社会とのリレーション構築 

中〜長期

流体

  • 台風、豪雨など自然災害の増加に備えた雨水排水設備等のインフラ整備の需要が増加

中〜長期

航空機

  • ​地球温暖化の影響により世界中で増加する大規模森林火災において、当社大型飛行艇に消火能力を付与することによる消火活動への貢献と売上増加の機会
  • 固定翼無人機による森林火災の監視サービス提供による売上増加の機会

中〜長期

  • 時間軸の定義
    短期:~2023年 中期:~2030年 長期:~2050年
  • 使用シナリオ
    1.5℃/2.0℃シナリオ:IEA Energy Outlook、IPCC第5次評価報告書2.0℃シナリオ(RCP2.6)
    4.0℃シナリオ:IPCC第6次評価報告書、IPCC第5次評価報告書4.0℃シナリオ(RCP8.5)

3. リスク管理

事業遂行にかかるリスクについては、「新明和グループリスクマネジメント規程」を定め、各事業部およびグループ会社において事業特性に適合したリスクマネジメント体制を主体的に構築しています。一方で、本社においては各事業部およびグループ会社のリスクマネジメントの状況をモニタリングするとともに、災害リスクや財務リスク等、全社横断的なリスク対策を実施することにより、リスクマネジメント体制を確立しています。

また、サステナビリティ会議は、本社および事業部門から報告を受けた情報に基づき、当社グループにおけるリスクマネジメント体制の整備状況および活動状況を確認するとともに、事業運営に及ぼす影響等に照らして全社の重大リスクを特定し、これらの情報を経営会議および取締役会に対し定期的に報告することにより、当社グループにおけるリスクマネジメントの有効性の確保に努めています。

気候変動については、気候変動が当社事業にもたらす潜在的な影響の大きさと長期的な不確実性に鑑み、当社事業に関わる気候関連リスク・機会を特定・評価するプロセスとして、2022年度に初めて2つの事業を対象にシナリオ分析を行いました。このシナリオ分析で明らかになった気候関連リスク・機会のうち、特に重大なものは、重大リスクとして上記の全社的なリスクマネジメントの枠組みの中で管理していきます。

4. 指標と目標

当社は現在、2030年までの中期的な温室効果ガス削減目標として「エネルギー使用に伴うCO₂排出総量を2030年度までに38%削減(2017年度比)」という目標を掲げています。これは、2017年度の当社のエネルギー使用に伴うCO₂排出量42,720 t-CO2eを2030年度の実績で26,486 t-CO2eにまで減少させるものです。
また、過去のScope1、2の排出量実績(単体)は下表のとおりで、2023年度からは主な国内の連結子会社からの排出量も算定・加算しました。 Scope3についても排出量(単体)を算定しました。

CO2排出総量 削減計画(単体)

TCFD_CO2排出総量削減計画グラフ

Scope1、Scope2 排出量(単体)

(t-CO₂e)
  基準年 過去5年間実績 目標値
管理指標 2017年度 2019年度 2020年度 2021年度 2022年度 2023年度 2030年度
Scope1 11,754 12,059 10,528 9,796 9,494 9,474
Scope2 30,966 23,893 20,321 20,682 17,918 19,918
Scope1+2 42,720 35,952 30,849 30,478 27,412 29,392 26,486
  1. ※1新明和工業単独の数値

Scope1、Scope2 排出量(国内連結)

主な国内の連結子会社を加算した場合のScope1、Scope2
(t-CO2e)
管理指標 2023年度
Scope1 12,442
Scope2 28,686
Scope1+Scope2合計 41,128
対象となる国内のグループ会社

イワフジ工業株式会社/東邦車輛株式会社/株式会社OSK/株式会社WAKO/ウイングフィールド株式会社/大亜真空株式会社/新明和パークテック株式会社/新明和アクアテクサービス株式会社/株式会社明和工務店

合計9社

Scope3 排出量(単体)

 
(t-CO2e)
  カテゴリー 2023年度
1 購入した製品・サービス 605,545
2 資本財 10,794
3 Scope1、2に含まれない燃料およびエネルギー関連活動 4,520
4 輸送、配送(上流) 3,158
5 事業活動から出る廃棄物 825
6 出張 423
7 雇用者の通勤 1,153
8 リース資産(上流) 非該当
9 輸送、配送(下流) 非該当
10 販売した製品の加工 非該当
11 販売した製品の使用 1,262,255
12 販売した製品の廃棄 1,413
13 リース資産(下流) 非該当
14 フランチャイズ 非該当
15 投資 非該当
合計 1,890,085