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【連載】「US-2」ができるまで(11)

-プロのライターが密着取材!

実はジェットエンジンを6基も積んでいるんです!


機体の全塗装が終わった「US-2」は、再び組立工場に戻り、艤装(ぎそう)の最終段階に入ります。そのハイライトといえる工程が、エンジンの搭載です。「US-2」は、ロールス・ロイス社製AE2100Jターボプロップ(ジェットエンジンでプロペラを回して推進する)エンジンを4基搭載しています。このエンジンは1基あたり約4,600馬力で、前任機「US-1A」のエンジンから約3割もパワーアップしています。

AE2100Jエンジンは天井のクレーンでつり上げられ、エンジンマウントに慎重に位置を合わせ、ボルトで結合していきます。この4基のエンジン(以下、メインエンジン)の搭載が完了すると、次にプロペラを取り付けます。「US-2」ではプロペラの羽根が「US-1A」までの4枚から6枚に増えましたが、取り付けの手間はほとんど変わっていないそうです。

ところで、「US-2」には合計6基ものガスタービン(ジェット)エンジンを積んでいるってご存じでしたか?

実は今ご紹介したメインエンジンのほかに、APUとBLC用の小型ガスタービンエンジンを1基ずつ搭載しています。APU(Auxiliary Power Unit)はメインエンジン停止中に機内に電力や油圧を供給したり、メインエンジンを始動させるための圧縮空気を供給したりといった役割があります。私たちが空港で旅客機に乗り込むとき、機内の照明やエアコンがついているのはこのAPUのおかげです。

BLC(Boundary Layer Control)は、現在製造されている飛行艇では「US-2」だけが搭載しているもので、このBLC用エンジンによってつくられた圧縮空気を主翼や尾翼の舵面から噴き出すことで、通常の航空機よりゆっくり飛ぶことができます。これにより離着水の速度が大きく下がり、着水時の衝撃や海水の飛沫(しぶき)を抑えることができます。「US-2」はAPU、BLCともに、海水を吸い込まないよう胴体の最も高い位置、主翼付け根付近に搭載しています。

※艤装(ぎそう)・・・エンジンや機体内外の装備品を取り付ける工程のこと、または取り付ける装備品そのもの。

全塗装が終わった「US-2」です。まだエンジンや機首の気象レーダーなどは取り付けられていません。(1)全塗装が終わった「US-2」です。まだエンジンや機首の気象レーダーなどは取り付けられていません
足場が組まれ、機体がすっぽりと覆われました。この足場が数時間で設置・撤去されます。(2)足場が組まれ、機体がすっぽりと覆われました。この足場が数時間で設置・撤去されます
プロペラは協力会社で製作され、事前に甲南工場に搬入されます。 ※メインエンジン取り付けの後の、プロペラ取り付けの工程をお見せします。(3)プロペラは協力会社で製作され、事前に甲南工場に搬入されます。
※メインエンジン取り付けの後の、プロペラ取り付けの工程をお見せします
プロペラをクレーンでつり上げます。ちなみにプロペラは地上でのアイドリング、離着水、飛行中など、それぞれに最適な角度(プロペラ・ピッチ)に変更できる機構を備えています。(4)プロペラをクレーンでつり上げます。ちなみにプロペラは地上でのアイドリング、離着水、飛行中など、それぞれに最適な角度(プロペラ・ピッチ)に変更できる機構を備えています。
「US-2」のプロペラは、推進効率と海水の飛沫(しぶき)に耐える頑丈さを両立する形状に設計されているそうです。(5)「US-2」のプロペラは、推進効率と海水の飛沫(しぶき)に耐える頑丈さを両立する形状に設計されているそうです
メインエンジン、プロペラの順で取り付けられ、エンジンにはカバーが付きました。(6)メインエンジン、プロペラの順で取り付けられ、エンジンにはカバーが付きました
スピナー(プロペラ軸前方の整流カバー)が取り付けられました。(7)スピナー(プロペラ軸前方の整流カバー)が取り付けられました。


ライター 板倉秀典

 

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