ShinMaywa INSIGHT

【連載】「US-2」ができるまで(9)

-プロのライターが密着取材!

機体の表面に、空気や水の抵抗を少なくするカバーを取り付けます  


前回は主翼取り付けの様子をお伝えしました。
今回は、飛行中の空気抵抗や水上滑走中の水の抵抗を少なくするために、機体の表面にカバーを取り付ける工程をご紹介します。

このような機体表面の整流(気流の乱れを整える)用のカバーを、一般的に「フェアリング」と呼びます。前回、「US-2」は胴体の上に主翼が載っているとお話ししましたが、主翼の前後にあって、それぞれ胴体との段差をなだらかにしているものがフェアリングです。機首にある気象用レーダーのカバー(レーダードーム=レドームとも呼ばれます)や、垂直尾翼上部の後方に突き出たカバーもフェアリングです。


また、フェアリングと同じく整流用のもので、機体表面から膨らんでいるものを「バルジ」と呼びます。もともとは艦船の左右舷側にとりつけて、浮力をアップさせたり、復原性(左右への傾きを抑える)を高めたりするものですが、航空機でも車輪の格納などのために設けることがあります。「US-2」やその前任機「US-1A」の胴体形状は、実は新明和工業として最初に量産した飛行艇「PS-1」から大きく変わっていませんが、「US-1A」「US-2」では、滑走路での離着陸も可能にするために、降着装置(ギア=車輪やその支柱)が強化されており、その大きくなったギアをカバーするためにバルジが追加されました。
 
フェアリング、バルジが取り付けられると、「US-2」の美しい曲線美が見えてきます。ここからは、動翼やギアの取り付けと並行して、機内でも機器の搭載や配線などの作業が進められます。

主翼と胴体の段差を解消し、機体表面を流れる気流をなだらかにする「AFTフェアリング」です。(1)主翼と胴体の段差を解消し、機体表面を流れる気流をなだらかにする「AFTフェアリング」です。

飛行中の空気抵抗を少なくするため、メインギア(主車輪)をカバーするふくらみが「バルジ」です。(2)飛行中の空気抵抗を少なくするため、メインギア(主車輪)をカバーするふくらみが「バルジ」です。
これもブロック工法の一種。あらかじめつくっておいたバルジを機体に密着させ、ピンで留めていきます(作業者は帽子内に頭部保護具を装着しています)。(3)これもブロック工法の一種。あらかじめつくっておいたバルジを機体に密着させ、ピンで留めていきます(作業者は帽子内に頭部保護具を装着しています)。

艇底にあるヒレ「スプレーストリップ」も後付け。離着水時の飛沫を抑えるはたらきがあるそうです。(4)艇底にあるヒレ「スプレーストリップ」も後付け。離着水時の飛沫(しぶき)を抑えるはたらきがあるそうです。
胴体と垂直尾翼の間に取り付けて、空気の流れをなだらかにする「ドーサルフィン」です。(5)胴体と垂直尾翼の間に取り付けて、空気の流れをなだらかにする「ドーサルフィン」です。
整流用のカバーですので構造的な強度は低く、この大きさですが人が持ち上げられるくらい軽いんだとか。(6)整流用のカバーですので構造的な強度は低く、この大きさですが人が持ち上げられるくらい軽いんだとか。


ライター 板倉秀典

 

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