無電解ニッケルメッキ
無電解ニッケルメッキとは
無電解ニッケルメッキとは、電気を使用せずに薬品の化学反応によって、ニッケルとリン(Ni-P)を含む金属皮膜を対象物の表面に析出※1させる表面処理技術です。
電解ニッケルメッキと異なり通電が不要なため、複雑な形状の部品でも均一なメッキ皮膜を形成できる点が大きな特徴です。この特性から、自動車部品、精密機械、電子機器、食品機械など幅広い分野で活用されています。
- ※1溶液中から固体が分離して沈着すること
無電解ニッケルメッキの特性とメリット
無電解ニッケルメッキの最大の利点は、複雑な形状の部品にも均一な皮膜を形成できることです。電気を用いないため電極を設置する必要がなく、素材の形状や大きさに制限がありません。
さらに、メッキ皮膜は高い硬度を持ち、摩耗や腐食を防ぐため、機械部品や電子部品の耐久性向上に寄与します。また、プラスチックやセラミックスなどの絶縁体にも適用可能であり、さまざまな用途に対応できる点も長所の一つです。
メッキ皮膜の性質は、リンの含有量によって以下のように変化します。
低リンタイプ(1~4%):高硬度で耐摩耗性に優れる
中リンタイプ(5~9%):特性のバランスが良く、幅広い用途に対応可能
高リンタイプ(10%以上):化学プラントや海洋設備など、特に耐食性が求められる環境に適している
無電解ニッケルメッキのデメリット
一方で、無電解ニッケルメッキにはいくつかの課題もあります。浴組成の変動が大きく、工程管理が難しいため、高度な技術と厳格な管理が求められます。処理温度が高いため、耐熱性の低い素材には適さないことも考慮すべき点です。
また、析出速度が遅く、加工時間が長くなることから、コストが高くなる傾向があります。さらに、電解ニッケルメッキと比べて材料費が高くなるため、コスト管理が重要になります。
- ※2メッキ液中の化学成分の構成
無電解ニッケルメッキの用途と活用事例
用途に応じてリン含有量や熱処理条件を調整することで、多様なニーズに対応できる無電解ニッケルメッキは、さまざまな分野で利用されています。例えば自動車分野ではエンジン部品、ギア、シャフトなどに適用され、電子・電気分野ではコネクタ、プリント基板、半導体関連部品などに使用されています。
新明和工業の流体製品では、耐食性の向上を目的に一部のルーツブロワの接ガス部に無電解ニッケルメッキ仕上げが行われています。