Message from the President and CEO

全てのステークホルダーの皆様との接点を大切に、日々の経営を推進してまいります

取締役社長五十川龍之

2030年のありたい姿を示した「長期ビジョン」。
当社グループにとって10年後の姿を志向する取り組みは初めてのことで、どうやって歩みを進めていくべきか悩んだ末に、2021年5月、3つの中期経営計画を経て2030年に至る手法を選択し、公開しました。2024年3月にその第1フェーズを終え、現在は第2フェーズへと歩みを進めております。

本稿では、前中期経営計画[SG-2023](以下、[SG-2023])を振り返り、皆様とその成果と課題を共有したうえで、新中期経営計画[SG-2026](以下、[SG-2026])の注力点をご説明いたします。

President & CEO
五十川 龍之

【転換】を掲げて取り組んだ[SG-2023]振り返り

「長期ビジョン」に至る道筋を示したのが、2021年に開示した長期経営計画[SG-Vision 2030](以下、[SG-Vision 2030])です。ここでは、企業グループとして、以下にお示しした水準に達することを自らに課しております。

[SG-Vision 2030] 目標水準(最終年度:2030年度) 
Management Indicators 目標水準
Net Sales 400billion yen or more
Overseas sales
(within the above net sales figure)
100billion yen or more
ROE
(Return on equity)
12% or more
ROIC
(Return on invested capital)
10% or more


第1フェーズにあたる[SG-2023]では、経営テーマとして【転換】を掲げ、ステークホルダーの皆様から「最近、新明和は変わったね」と評価していただく姿を思い描き、推し進めてきました。
この間、新型コロナウイルスの感染拡大により世界経済が大きな打撃を受ける事態に見舞われましたが、[SG-2023]の業績を振り返りますと、初年度にあたる2021年度の売上高は、前年度実績を上回り、営業利益も同水準を維持するなど、当社グループの事業の多くが社会インフラの一部を形成していることを改めて実感いたしました。
その後、社会活動は回復していきましたが、短期間にインフレが加速し、原材料価格の高騰や、人手不足に伴う人件費・輸送費の増加等により、当社グループの足元の営業利益率は5%を下回っております。競争力を示す利益率が低迷している事態に対して、早急に対策を講じる必要がありますが、その大きな要因が収益の主軸を担う特装車セグメントに由来しており、今後も、価格改定をはじめ具体的な対処を行ってまいります。
こうした中、[SG-2023]のテーマ、【転換】を実感したこととして、これまで脚光を浴びる機会が少なかった産機・環境システムセグメントが大きく伸長し、同セグメントに関するご質問や期待する声が多く寄せられたことがあげられます。躍進の主役は、2018年にM&Aによりグループに迎えたKOREA VACUUM LIMITED(韓国真空)の台頭です。同社は、EV(電気自動車)に搭載されるリチウムイオン電池の製造工程に必要な設備を製造しており、今後のEV普及に対応するべく、車載電池の設備投資を計画されているお客様の要求にしっかり応えてくれました。グループに迎えて5年経ちますが、同社製品の品質、そしてグローバル市場への適応能力の高さを見込んで実施したM&Aを振り返り、あの時の判断は正しかったと実感しております。
これ以外にも、緒に就いたばかりではありますが、私の肝いりで、新事業を創出し、その立ち上げに専念する組織として、本社に新事業戦略本部を設けるとともに、同組織主催による従業員参画型の新ビジネスアイデア発案活動をスタートするなど、積年の課題である新事業創出に全社を挙げて取り組む決意を社内外に示せたことも、現状から脱する【転換】の一端にあたります。
なお、株主の皆様に対しましては、[SG-2023]の期間中、当初お示しした配当性向に基づく配当を継続して実施することができました。

[SG-2023]期間中の業績推移      
  [SG-2023]
目標値
2022年3月期
実績
2023年3月期
実績
2024年3月期
実績
Net Sales 250 billion yen 2,168億円 2,251億円 2,570億円
海外売上高(内数) 45 billion yen 310億円 463億円 532億円
Operating Profit 15 billion yen 105億円 92億円 117億円
ROE 10% or more 7.7% 7.6% 7.1%
ROIC 7%以上 5.1% 4.4% 5.3%
Dividend payout ratio 40~50% 40.0% 40.5% 42.6%

[SG-2026]では、【拡大】路線を志向

さて、第2フェーズにあたる[SG-2026]のテーマは、【拡大】です。[SG-Vision 2030]で掲げた高い目標に至る3つのフェーズをそれぞれ【転換】【拡大】【飛躍】と名付け、[SG-2026]は、最終フェーズ【飛躍】へとつなぐ重要な3カ年となります。
2024年3月期(2023年度)の売上高は2,570億円でした。[SG-Vision 2030]の目標水準に達するには、さらに約1.5倍以上引き上げなければなりません。また、ここでは営業利益の目標水準は示しておりませんが、増収とあわせて、収益性の向上は大命題であり、[SG-2023]で未達であった営業利益、ROE、ROICを高め、まずは[SG-2026]の目標値を達成し、ステークホルダーの皆様の期待にお応えするべく努めてまいります。

なお、現在[SG-2026]では、これら6つの方針を掲げて取り組んでおります。

Basic policy
  1. 1.持続的成長の実現
  2. 2.事業ポートフォリオ・マネジメント
  3. 3.ROIC経営の浸透と推進
  4. 4.人的資本の強化
  5. 5.製品・サービスを通じた環境、社会への貢献
  6. 6.リスクマネジメント・コンプライアンスの強化

これら6つの方針は、経営施策において各々の関連性を意識しつつ実践していくことが肝要であり、それを図式化したのが、「価値創造プロセス」です。
この、「価値創造プロセス」に基づいて【拡大】を具現化していく姿を、以下の経営目標値の達成をもってお示ししたいと考えております。

[SG-2026]目標値 
Management Indicators 目標値
Net Sales 3,200億円
Overseas sales
(within the above net sales figure)
800億円
Operating Profit 180億円
ROE 10% or more
ROIC 7%以上
DOE(株主資本配当率) 3%をめどに配当を実施

成長の源泉は、事業活動の活性化 ‒「深掘り」と「探索」に注力 ‒

基盤事業については、収益拡大を目論む以下のポイントに注力いたします。各事業・製品の現在・将来価値(事業ポートフォリオ)に関する議論を進め、現有事業の「深掘り」に注力するとともに、成長投資対象の見極めを行ってまいります。

セグメント別 注力ポイント(一部抜粋※)
Segment 注力ポイント
专用车
  • 要素機器のインテリジェント化→新たな付加価値の創出
  • 特装車サブスクリプションビジネスの領域拡大
  • 海外でのコンポーネント製品の販売拡充
停车场
  • 新明和パーキングサポートアプリ『SPASA®』を用いたCASEへの対応強化
  • 遠隔操作による自動運転機能を有した航空旅客搭乗橋の拡販
  • 駐車設備保守サービス事業の多角化(社会インフラ、産業機器分野等)
产业机械/环卫系统
  • 自動電線処理機:高速通信ケーブル加工の自動化製品展開
  • 真空技術:EV向け製造装置周辺設備開発、既存製品バリエーション拡充
  • 環境関連:自社オリジナルAIIoT技術適用による高付加価値化・省力化
流体
  • 雨水対策:豪雨・浸水対策分野の規模拡大
  • 下水分野:省エネ、社会変化に対応したアフターサービス・DX技術の投入
  • タイの生産拠点を活用したアジア地域における競争力強化
飞机
  • 民間機:複合材の新素材・再生素材研究→製品開発
  • 飛行艇:PBL(成果保証契約)に関連する事業立ち上げによる収益安定化、運用支援の強化
  • 固定翼型無人航空機(自社開発)を用いた将来顧客への訴求活動
※ 詳細情報につきましては、本サイト「決算説明会」ページに掲載の「中期経営計画[SG-2026]説明資料」をご覧ください。


また、先に申し上げた新事業戦略本部を中心とした、新事業創出を志向する「探索」活動につきましては、[SG-2023]の期間に既に公表したもの、現在事業化の見極めを行っているものなど10を超えるテーマについて、各々に主担当者を置いて推し進めております。新規ビジネスが成功に至る確率は「千三(せんみ)つ」といわれており、新たな収益源が容易に創出できるとは思っておりませんが、長期ビジョンの具体化を思い描き、当社グループを支える「新たなビジネス」をお示しできるよう、粘り強く取り組んでまいります。

既に公開している新ビジネスのテーマ
テーマ 概要・ポイント
小規模分散型水循環システム 下水道インフラの老朽化・過疎化対策として、WOTA(株)と協業し、小型分散処理水インフラの導入を促進する取り組み。
水素サプライチェーンビジネス 株式会社フレイン・エナジーと共に有機ハイドライド技術を用いた水素搬送、貯蔵フローの浸透を促進する取り組み。

社会から広く認められる企業グループであるために 
‒ いつも、ステークホルダーとともに ‒

新たにお示しした「価値創造プロセス」では、当社グループと接点のあるステークホルダーを、より意識した経営姿勢を打ち出しました。
「経営理念」は、経営の根幹となる考え方で、当社グループの存在理由、目的、使命を表したものです。そこに向かう通過点として、2030年にありたい姿を示したのが「長期ビジョン」です。これらは創業100周年を機に制定したものですが、いずれも我々の意志を示したものであり、ステークホルダーに向き合う視点が不足していることに気づきました。
そこで、[SG-2026]を策定する過程で「価値創造プロセス」を見直し、この中で「ステークホルダーへの価値提供と重要課題」を明確に示しました。

当社グループによる価値提供と注視・注力点
ステークホルダー 価値提供 注視・注力点
Customers お客様の課題解決に、技術・製品・サービスで貢献し続ける。
  • お客様満足度
  • 品質
  • 納期
Employees 自律的に挑戦する機会と、個人の能力が組織とともに成長できる職場を提供する。
  • エンゲージメント
  • キャリア形成
  • D&I推進
  • 安全衛生
Business Partners 公正な取引と対等なパートナーシップを通じて取引先との共存共栄を実現する。
  • CSRリスクアセスメント
  • 適正な価格交渉
Shareholders 株主との対話を通じて経営の改善を図り、企業価値の最大化を目指す。
  • 株主価値の向上
  • 株主・投資家との対話
Local communities and Society 事業活動により地域・社会の課題を解決し、共に発展する。
  • 地域包括連携協定の締結
  • 障がい者の雇用創出

 当社グループの生業(なりわい)は製造業ですが、製品の付加価値に加え、グループ内に日々安心してお使いいただけるサポート体制を敷いている点も強みの一つです。また、「輸送用機器製造」というくくりには収まらない広範な分野において、専業とされる同業他社と対等であることを誇りに思っております。
こうした中、これまでは、事業活動に経営資源を集め、お客様のご期待に応えることで存在価値を示してまいりましたが、さまざまな方面から社会的要求が増す中、また、東京証券取引所のプライム市場に上場している法人として、皆様との接点を大切に、日々の活動を通じて常に必要とされ、期待していただける存在でありたいと思っております。ここにお示しした注視・注力点を実践し、価値提供の項に記した内容を実現することで、ステークホルダーの皆様に報いていく所存です。
なお、株主の皆様方は、当社が、株式市場における存在意義を示す指標「PBR(株価純資産倍率)」が、東京証券取引所が示すボーダーライン 1倍割れの状態にあることを案じておられることと思います。2024年5月に東京証券取引所に対して改善対策を提出し、現在、その実践に努めております。本件につきましては、財務担当役員メッセージのページで、取締役 常務執行役員 財務部長の久米も言及しておりますので、そちらもあわせてご高覧ください。

経営理念の追求 - 私が大切にしていること -

ここまで、2030年を志向した「長期ビジョン」と、そこに至る経営計画として[SG-Vision 2030]、[SG-2023][SG-2026]について説明してまいりましたが、全ては、当社グループがお客様はじめステークホルダーの皆様から信頼していただける存在であってこそ成り立つものです。
「価値創造プロセス」の図の土台部分に「社是」「行動指針」「行動規範」を示しておりますのは、法人として、またそこに勤める従業員一人一人がこれに沿うことを前提としているためです。
こうした中、2023年9月、パーキングシステム事業部に公正取引委員会の検査が入ったという事実は誠に遺憾であり、ステークホルダーの皆様には大変ご心配をおかけしております。ご不安を招く状態が長期化しておりますこと、この場をお借りしてお詫び申し上げます。
本件は複数の企業が調査対象となっているとの報道から、検査結果が明らかになるまで時間を要すると思われます。現在も、公正取引委員会の検査に全面的に協力しているところですが、改めてグループ内に「社是」「行動指針」「行動規範」の実践を約束させるとともに、リスクマネジメント体制のさらなる強化にも取り組んでおります。不正や不祥事が発覚した際の対応もさることながら、未然防止に最大の力点を置く考えです。
社長就任から8年目に入りましたが、これまで自身が経験してきたどの時代よりも社会の変化の激しさとスピードの速さは上回っていると実感しております。その中で、揺らぎのないよりどころとなるよう、自らの信念と経営幹部の想いを、今般の[SG-2026]や、「価値創造プロセス」に集約いたしました。歴史を大切にしつつ、我々の時代に【転換】【拡大】を感じていただけるような、持続的成長を遂げるうえで新たな事業を芽吹かせ、いずれのステークホルダーの皆様にも将来を期待していただける企業グループとなるよう努めてまいりますので、今後ともご指導、ご支援のほどよろしくお願い申し上げます。