真空成膜・表面改質

大型イオンビーム源「リニアイオンソース」の販売を開始

永久磁石を使用しない電磁コイル式の磁束発生により、大型対象物への照射、作業性、メンテナンス性向上を実現

2024年09月03日

新明和工業株式会社(本社:兵庫県宝塚市、取締役社長:五十川 龍之)は、このたび、高機能フィルムの製造過程における真空成膜の領域での表面処理や、大型工具のコーティング除去等に使用する電磁コイル式の「大型イオンビーム源『リニアイオンソース』」を開発し、販売を開始しました。今般開発をした「リニアイオンソース」は大型対象物への照射が可能となり、加えて磁場の形成に電磁石を使用することにより、作業性とメンテナンス性の向上を実現しました。

なお、本リニアイオンソースは、11月5日から東京ビッグサイトで開催される「第32回日本国際工作機械見本市(JIMTOF2024)」に出展いたします。

リニアイオンソースの外観図(左)、イオンビーム照射イメージ(右)
リニアイオンソースの外観図(左)、イオンビーム照射イメージ(右)

開発の背景

リニアイオンソースは、一般的に、高エネルギーのイオンビームを発生させる磁場の形成に強力な永久磁石が使用されています。しかし、金属コーティングの除去等により発生した金属ダストがこの永久磁石に引き付けられ堆積すると、イオンビームが不安定な状態になることから、定期的に金属ダストを除去するメンテナンスが必要でしたが、永久磁石の影響で、イオンソースを構成する部品を簡単に取り外せないといった点が課題となっていました。
現在、日本国内でリニアイオンソースの製造・販売を手掛ける企業はわずかで、主に欧米製が採用されています。高機能フィルムの製造工程の変化により大面積イオンビームによる表面処理のニーズや、超硬工具のコーティング除膜によるリサイクルにおいても被膜範囲の拡大に伴って、大型サイズのイオンビーム源のニーズが高まる中、お客様からは、国内メーカー製のリニアイオンソースを求める声が寄せられていました。

当社製電磁コイル式「リニアイオンソース」の優位性

こうした背景を受け、当社では、当社製「イオンエッチング装置」に搭載している「丸型イオンソース」で採用しているコイル式を応用し、コイルに電流を流して磁場を形成させる電磁石を使用した「リニアイオンソース」を開発。大型対象物にも照射できるよう、複数の電磁石の最適な配置を導き出し、適切な諸元のコイルを選定することで長尺化を実現しました。これにより、イオンビーム稼働時以外は磁力が発生しないため、金属ダスト付着が抑制され、メンテナンス頻度を抑制、加えて長時間の連続運転が可能になり、作業効率も向上しました。また、メンテナンス時も部品の着脱が容易に行え、メンテナンス性も向上しました。

今後は、他の装置メーカーへのリニアイオンソースと電源を組み合わせたコンポーネント販売に注力するとともに、リニアイオンソースを搭載した当社製の大型のイオンエッチング装置を提案していく計画です。

当社では、イオンエッチング装置と共に、耐摩耗性を高めるダイヤモンドコーティング装置などもラインアップしており、真空事業を手掛けるグループ会社の大亜真空株式およびKOREA VACUUM LIMITEDとの連携により、お客様のニーズに沿った、最適な薄膜・表面処理技術を一貫して提供することが可能です。これまで培ってきた真空技術をさらに発展させ、社会のニーズに応える技術創出に努めてまいります。

1.特長

  • 長さ400~1,000㎜の大面積にビーム照射が可能
  • 永久磁石を使用せず、電磁石による磁場形成を実現
    これによる金属ダストの付着抑制により、メンテナンス性も向上

2.主要諸元


型式 LIS400 LIS500 LIS600 LIS700 LIS1000
ビームの長さ (Lb) (mm) 400 500 600 700 1,000
ビームの幅 (Wb) (mm) 37 37 37 37 37
出力 最大印加電圧 ~4kV 
最大電流 300~400mA(ガス種、条件による)
サイズ (mm) L: 500 640 730 830 1,350
W: 160 160 160 200 200
H: 143 143 164 164 200
質量 (kg) 22kg 25kg 30kg 35kg 55kg
ユーティリティ 冷却水 (25℃±2℃ 0.35-0.40MPaG) 3L/min  5L/min
適用ガス (使用量は真空炉容積による) Ar/O2
専用電源 イオンソース用高電圧電源 入力:単相AC200V-240V 50/60Hz
出力:最大DC4kV 最大500mA
電磁コイル用電源 入力:単相AC100V 50/60Hz
出力:最大80V 最大14A(360W)
※ビーム長さ1,000mm以上のサイズはご相談ください。

3.用途

  • 高機能フィルム製造におけるエッチング、クリーニング
  • 大型ワークの除膜など

4.主要販売先

  • フィルムおよびフラット基板向け成膜装置メーカー
  • 工具メーカー、コーティングメーカー

5.販売開始時期

2024年8月

6.販売目標

30台/年~

7.用語解説

  • イオンソース:原子および分子のイオンを生成する機器。
  • リニアイオンソース:長尺・長方形型のイオンソース。丸型イオンソースに比べ、より広いエリアにイオンビームの照射が可能。
  • イオンエッチング装置:イオンを対象物に衝突させ、物理的に削る機能を持つ。当技術を用いて、切削工具や金型、各種部品などの基材上のコーティングを剥がす(除膜する)のに用いられる装置。

本件に関するお問い合わせ先

報道機関の方

新明和工業株式会社 経営企画本部 広報部

〒665-8550
兵庫県宝塚市新明和町1-1

製品について

新明和工業株式会社 
産機システム事業部 メカトロ本部

〒665-8550
兵庫県宝塚市新明和町1-1

以上

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