真空成膜装置のお話

2.真空成膜装置のしくみについて

-不純物が少なく、密着性の高い薄膜を作るには?

薄膜を形成するには?

薄膜を形成する方法として、一般的に、真空成膜技術には、粒子の物理的な運動を利用した物理的気相成長法(PVD)と化学反応を利用した化学的気相成長法(CVD)の二種類があります。ここでは、前者に属する蒸着法とスパッタリング法について簡単に説明しましょう。
蒸着法とは、(a)のように膜材を真空中で加熱・溶解・蒸発させ、対象物に付着させる最も簡単な成膜方法です。ちょうどお風呂から上がった湯気が天井で水滴になる現象に例えることができます。

(a)蒸着,(b)スパッタリング

一方、スパッタリング法とは、まず(b)のように真空容器と膜材でできた電極(ターゲット)の間に数百ボルトの電圧をかける方法です。このとき不活性ガス(アルゴン等)を少し入れると放電が発生し、そのエネルギーによってガス粒子がプラスの電気を帯びます。プラスの粒子は大変強い力でマイナスの電極に引きつけられ、電極に衝突します。この勢いで膜材の一部が粒子になって弾き飛び、対象物上に膜を作ります。
たとえば、古くなった蛍光灯の中の気体が放電によってフィラメント(白熱電球などの発熱・発光部分)に衝突し、フィラメントの一部がガラス管の内側に付着すると、蛍光灯の端の部分が黒く変色します。これも、スパッタリング成膜の一種と考えられます。

良い品質の薄膜を作るには?

ただし、これだけでは、不純物が少なく、密着性の高い、良質の薄膜を作ることはできません。成膜の際に、容器内を真空状態にすることがポイントです。
たとえば、(a)大気や(b)低真空の状態で、膜を形成すると、薄膜材料の粒子が容器上部の対象物に向かって移動しようとしても、空気中の水蒸気や酸素、窒素、二酸化炭素などの粒子がその邪魔をするため、なかなか対象物にまで届かず、膜ができません。また、たとえ薄膜材料の粒子が対象物に到達しても、密着力の弱い薄膜にしかならなかったり、薄膜材料が空気中の別の物質と結合して変質してしまったりなど、さまざまな問題が起こりえます。そこで、(c)のように容器内を高真空の状態にして、できるだけ空気中に含まれる余分な成分を減らすことにより、不純物が少なく、密着性のある良質な薄膜を作ることができるのです。

(a)大気,(b)低真空,(c)高真空

真空にするには?

真空成膜装置は、この原理に基づいて、真空容器内で膜を形成させる装置で、下図のように真空容器、真空ポンプ、バルブから構成されています。ただ、現在は真空容器の中の空気を、大気から高真空まで一気に排気できる能力を持ったポンプはないため、図のように粗排気用ポンプ(大気圧105Pa~数Pa)と本排気用ポンプ(数Pa以下)の2種類のポンプを用意します。はじめのうちはラフバルブだけを開いて粗排気用ポンプ一台で排気します。次にラフバルブを閉じて残りの二つのバルブを開き、本排気用ポンプと粗排気用ポンプの二台直列で排気を行います。これでやっと、真空容器内を成膜ができる圧力にすることができるのです。

これが、真空成膜装置のメカニズムです。
さて、次回は、新明和の真空成膜事業における試みと、独自技術についてご紹介します。