広がる「US-2」の可能性

陸上はもとより、荒海にも離着水できる「US-2」。防衛省が開発した装備品ではありますが、この機体の民間、もしくは他省庁への転用が実現すると救難・救急患者の移送以外にも、様々な活用が可能な多様性を秘めています。

旅客輸送飛行艇

大規模な改造で民間型式証明を取得した場合。

主な活用法
  • 離島住民の都市部への交通手段

US-2は極短距離で離着水できる能力を有しているため、旅客輸送飛行艇として運用する場合、陸上滑走路がなくても対応可能です。従って、環境に配慮した離島航空路を設置することができます。

東京ー小笠原(父島)間の旅客輸送構想

約1,000kmの距離を、片道約2.5時間で飛行。 丸一日を要する船舶輸送とくらべて、時間を 約1/10短縮することができます。

東京から小笠原間 距離:約1000km 飛行時間:片道約2.5時間 船舶:片道約25.5時間

揚陸用施設のイメージ図

US-2は最小限の揚陸用施設があれば運用可能です。

多目的飛行艇

小規模な改造で目的に応じた機能・性能を付加した場合。

主な活用法
  • 災害救援
  • 離島の医療支援
  • 洋上監視、国境離島保全
  • 物資輸送、国際緊急援助

現在の主要業務である離島からの急患輸送にとどまらず、離島への医療支援、緊急支援物資の輸送、国土保全など、「海洋基本法」の基本計画遂行にあたり、さまざまな活用法が考えられます。

離島への医療支援

船舶やヘリコプターではカバーできない離島に対する医療支援も迅速に対応できます。

救急患者を収容する様子
飛行場 離島の海に着水し医療支援 救急車で病院へ搬送

緊急支援物資の輸送

人員・支援物資を搬送

災害発生時、陸上からでは不可能な地域へ人員や支援物資等を輸送します。また、空港が被災した場合でも、近辺の海・湖・河川などに着水することができます。

本土から遠く離れた島々の国土保全

US-2は約4,500kmという長い航続距離を誇ります。これにより、沖ノ鳥島など、本土から遠く離れた島々にする保全作業(護岸工事など)が迅速に行えます。

沖ノ鳥島
支援舟艇で、人員・物資を搬送 人員・支援物資を搭載
US-2の行動範囲

東京-沖ノ鳥島間の所要時間を比較した場合

  • 船舶:約2日(片道)
  • US-2:約4時間(片道)

TOPICS! 「US-2」を海外でPR

ASEAN地域フォーラム
災害救援実動演習に初参加

2009年5月4日、マニラ湾にて、大型台風の襲来による大規模災害を想定して、日本を含むASEAN諸国、米国、欧州連合(EU)など11カ国1地域が加わり、国際災害救援実動演習が行われました。
海上自衛隊からはUS-2がこの訓練に参加し、マニラ湾に着水して遭難者を救助するという想定で行われた実動演習に、参加各国から高い評価を得ました。

[再生時間:3分06秒]

「US-2」Q&A

Q
海上自衛隊の皆さんから「US-2」はどのように評価されていますか?
A

パイロットの方からは「US-1Aと比べると格段に操縦しやすい」との感想が寄せられています。
操作性能の改善に加え、機内を与圧化したことで部隊の方にとっても、そして救難者にとっても快適な空間になりました。
また、「長距離航続性能」が飛躍的に向上したことも「US-2」の評価が高まった理由の一つです。無給油で飛行できる距離が格段に延びたことから、運用の選択肢も広がったようです。

Q
「US-2」に対する海外の関心も高まっているようですね。
A

水陸両用の航空機を製造しているのは日本、カナダ、ロシアの3カ国のみです。その中で、外洋に着水でき、大人数を乗せることが可能で、かつ長距離を飛ぶことができる、これらの市場要求をすべて満たしているのは「US-2」だけです。
今、メーカーである私たちに課せられているのは「製造コスト」の削減ですね。

Q
「US-2」の運用範囲が広がると、どのようなメリットがあるのでしょうか。
A

国の財産を使って開発した機体ですから、まず、国内での用途拡大が先決と考えています。
私たちが研究している一つは「US-2」に消防機能を付けることです。頻発する林野火災の消火活動に有益であるだけでなく、大規模災害が発生した時、消防車やヘリコプターでは対応できない場所で消火活動できる点が最大の利点です。
この他に、ドクターヘリでは対応できない離島の救急患者に対し、「救急飛行艇」を派遣するのも一案です。
「US-2」ならではの水陸両用能力を生かした運用を考えると、可能性は更に広がります。離島に住む方々の安全や福祉を守ることは、国を守ることにつながります。こうした取り組みの具体化を経て、近い将来、技術力で社会貢献する象徴として輸出も実現していきたいですね。